【お酢の歴史と種類】お酢は紀元前5000年頃生まれた世界最古の調味料。
【お酢の歴史】お酢の原材料はお酒
日本人にとって身近な調味料の一つであるお酢。最近では健康ブームや食の安全志向から、調味料としてだけでなく健康食品に近い位置付けにもなってきました。
お酢は、料理の『さ(砂糖)・し(塩)・す(酢)・せ(醤油)・そ(味噌)』の中にも入っているしそこそこ歴史はありそうですが、そもそもお酢がどうやって作られているかご存知ですか?
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【お酢の歴史】紀元前5000年頃生まれた世界最古の調味料
お酒すべてが原材料になるお酢。今回は奥深いお酢の歴史に迫ります!
お酢の起源は紀元前5000年
お酢の起源は、今から7000年前の紀元前5000年まで遡ります。現在のイラク南部にあたるバビロニアで、ナツメヤシや干しぶどうからお酢を作っていたという記録が残っています。調味料の記録としてはこれが一番古く、お酢は世界最古の調味料と言われています。
恐らく最初は、食べずにとっておいたナツメヤシや干しぶどうが空気中に存在する微生物の力でアルコール発酵し、いつの間にかお酢になっていた。というような感じだと思うのですが、あのお酢特有のツンと来る香りにもめげず最初に口にした方はスゴイですね。
お塩の起源は紀元前2000年
でも『お酢が世界最古の調味料』と聞くと、なんとなく違和感がありませんか?海水もあるしお塩の方が古そうな気がします。でも、現在でいう調味料としての製塩技術が行われていた記録は紀元前2000年頃の物が最古です。
海岸地域に住んでいる方が塩水で味付け・・・なんてことはもっと古くから行われていたかもしれませんが、意外にも記録に残っている調味料の歴史ではお酢の方がお塩より3,000年も古いのです。有名な旧約聖書にもお酢の記載がある程です。
【世界のお酢の歴史】薬や栄養ドリンクとして大活躍
紀元前5,000年頃誕生したお酢は、世界中で様々な文献が残っています。世界の歴史の中ではお酢はどんな風に使われていたのでしょうか?興味深いエピソードを添えて世界のお酢の歴史を振り返ります。
紀元前1100年頃の中国では、お酢作りの役人がいたことや漢方薬として使われていた記録が残っています。また、紀元前400年頃には『ヒポクラテスの誓い』で有名な西洋医学の父であるヒポクラテスが治療の一環として薬としてお酢を使っていた記録が残っています。
古代ローマではお酢ドリンク「ポスカ」が大流行
大航海時代になるとお酢は保存料として活躍
その予防のために、野菜を保存しようと試行錯誤した結果、現在でいうピクルスのようにお酢に漬けた野菜が考案されました。この頃からお酢の殺菌効果が認められていたんですね。
【日本のお酢の歴史】日本に伝わったのは古墳時代
日本にはお酢はいつ頃伝わった?
7,000年以上前から世界中で作られ、その効果が認められていたお酢。日本にはいつ頃伝わったのでしょうか?日本には紀元400年頃の古墳時代に中国から米酢が伝わったと言われています。
紀元400年頃と言えば卑弥呼よりは後、聖徳太子よりは前という、歴史ではちょっと中途半端な時代です。仏教が伝わったのが500年代半ばと言われているので、お酢は仏教より早く日本に伝わっていたのですね。もしかすると聖徳太子もお酢を飲んでいたのかも・・・なんて思うと夢が広がります。
その後奈良時代には万葉集にもお酢のことが詠まれていて、上流階級・貴族社会の高級調味料として使われていた文献が残っています。奈良時代の法律である『養老律令』には、酒造りの役人がお酒と一緒にお酢も造っていたという記述があります。
また世界での使われ方と同じように、漢方薬の一種や薬としても使われていたそうです。
万葉集に詠まれていたお酢の和歌
今想像しても鯛の焼き物やお刺身をニンニク入り酢醤油で食べるなんてとってもおいしそう。
1300年前からお酢にはさっぱりとした口当たり+栄養があるというイメージがあったんですね。
日本でお酢が広まったのは江戸時代
長く上流階級の高級調味料として使われていたお酢が、日本で一般に広まったのは江戸時代中期になってからです。これはお寿司の歴史とも重なります。江戸時代までのお寿司と言えば魚の長期保存用に魚を発酵させて作る『熟鮓(なれずし)』がありました。
ただ、熟鮓は魚を塩とご飯で乳酸発酵させた発酵食品なのでお酢は使っていません。
江戸中期になり米酢が一般にも流通するようになって誕生したのが『早寿司』。ごはんにお酢を混ぜて押し寿司にするという、現在のお寿司に通じるスタイルです。
そして江戸後期には『握り寿司』が誕生しました。さっとお店に入ってさっと手で食べられる『握り寿司』は江戸っ子の粋なスタイルとマッチして大人気だったそうです。ただ、当時の握り寿司のご飯はおにぎり位の大きさだったとか。
2つに切って食べるのが主流だったので、今の1皿に2貫載せるスタイルはこの頃の名残だと言われています。
この後、昭和に入り戦中戦後の食糧難の時代になるまで、お寿司が江戸から全国へ広まると同時にお酢も一般に広まるようになりました。
世界のお酢にはどんな種類があるの?
大別すると穀物を原料とする穀物酢、果実を原料とする果実酢、酢酸を水で薄めて食品添加物を加える合成酢の3種類に分けられます。
穀物酢
お酢の中で穀物を原料とする物は穀物酢に分類されます。日本では米酢を含む穀物酢が一般的ですよね。
穀物の中でも米を原料とするものは米酢、玄米を原料とするものは黒酢、酒粕を原料とするものは赤酢、大麦を原料とするものは大麦黒酢と数種類に分類されます。
イギリスでは大麦を原料とするモルトビネガーが主流。フランスなどのヨーロッパ圏ではワインビネガーが主流。米を主食とする日本では米酢が主流と、世界でもその土地に合ったお酢が作られているのが分かります。
果実酢
お酢の中で果物を原料とする物は果実酢に分類されます。
日本ではりんご酢が有名ですが、やはり米酢を含む穀物酢の方が主流ですよね。でもお酢の起源は干しぶどうなどを原料とした果実酢であると言われていて、世界では果実酢が主流です。
変わった物だと東南アジアではココナッツを原料としたココナッツビネガーやパイナップルビネガーなどもあります。糖質を含んでアルコール発酵できる物は全てお酢の原材料になるので、世界には沢山の種類のお酢があるんです。
合成酢
日本では紀元400年頃にお酢が伝わった頃から米酢が主流でしたが、農作物を原料としない合成酢という物も存在します。
メリットは安価で作れること。
大正時代に石油や石灰石を原料とした工業用アルコールから作られた氷酢酸を水で薄めて、人工甘味料など複数の食品添加物を加えた合成酢が生まれました。米を原料としないので庶民にも価格を抑えたお酢として流通し始め、昭和の戦中戦後の食糧難の時代には米を原料とする製品を作ることが禁止されたので、合成酢が一般的なお酢として広まりました。
しかし、昭和45年の法改正により氷酢酸を使用したお酢は『合成酢』と表記することが義務付けられ、それ以降はほぼ合成酢を見ることはなくなりました。今の日本では一部の地域でだけ販売されています。
編集後記
意外にもとても古い歴史がある、世界最古の調味料と言われるお酢。古くは高級食材であったり、漢方薬や薬として使われていたりと、健康食として使われていたことは間違いないようです。そんな風にしてお酢を口にしてみると、また違った味わいが生まれそうですね。
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